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護身用品は法律に触れるの?

護身用品と銃刀法について

スタンガン、催涙スプレー、特殊警棒などの購入を検討されているお客様の中に以下のようなご質問される方がいらっしゃいます。
スタンガン(催涙スプレー、警棒)を持っていたら銃刀法で捕まりますか!?
実際に勘違いされている方も多いようですが、
答えは銃刀法と護身用品は全く関係ありませんし、捕まることもありません。
購入して、自宅や事務所などに備え置くことは法律的に問題なく、完全に合法です。

護身用品と軽犯罪法について

スタンガン、催涙スプレー、警棒などの護身用品が法律に触れるとすればコレになるかと思います。
「軽犯罪法」
軽犯罪法1条2項に次のような文が記載されています。

正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
護身用品そのものを指すわけではありませんが、広く武器になり得るものを理由がないのに隠して携帯することを禁止しています。
したがって、ナイフでももちろんですが金属バットやゴルフクラブ、スパナなどの工具であってもその対象になります。
しかし、野球の試合に行く途中に金属バットもっていても何ら不思議ではありませんし、それは正当な理由となりますのでこの法に抵触することはありませんが、銀行に向かっている最中に金属バットを持っていれば同じ物でも抵触する可能性が高くなります。
護身用品も同じです。
正当な理由がないのに持ち歩くと軽犯罪法に触れる可能性が出てきます。
それでは護身の為に持ち歩くのはOK?
それはその状況よると思います。例えば夜間に金庫から大金を持って移動するのに護身用品は正当な理由といえるかと思います。
ストーカーにあっている女性が警察にも相談をしてなお不安なので催涙スプレーを持ち歩くのも正当だと言えると思います。
残念ながらこの「正当な理由」という部分は問題になった際の担当官によって変わってくると言えます。
本当に必要な方であってその状況であっても携帯を認めない事もありえますし、実際にそのような事例も耳にします。
護身用品を携帯していて警察に没収されたという話も何度か聞いたことがあります。
残念ながら日本では防犯のための護身用品でさえ携帯を認めてくれません。
それなら、警察がいざというときに必ず守ってくれるかといえばこれも答えはNOです。警察は基本的には事件になってからでないと動いてくれません。これは周知の事実です。
でも殺されたり・レイプされたりしてから警察に言ってなんになるのでしょうか?
それが護身用品の携帯に対して悩ましい問題でもあります。
以下は催涙スプレーを携帯していて警察に止められた方がどうしても納得できず裁判をして勝訴した例です。
スタンガンや警棒については事例がないのでなんとも言えませんが・・・

—–以下参考—–

軽犯罪法1条2項の「正当な理由」について(判例タイムズ1296 号141 頁以下)

1.事件の概要

深夜の路上でサイクリング中の被告人が、ズボンの左前ポケット内に催涙スプレー1 本を携帯していたことが、軽犯罪法1 条2 号にいう「人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」に当たり、かつ、「隠して携帯」に当たるかが争われた事例。

2.参照条文(軽犯罪法1条2項)

第一条 左の各号の一に該当するものは、これを拘留又は科料に処する。
一(略)
二 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

3.判決要旨(最高裁第一法廷判決平成21年3月26日)

1. 軽犯罪法1条2項にいう「正当な理由」があるとは、同号所定の器具を隠して携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合をいい、これに該当するか否かは、当該器具の用途や形状・性能、隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係、隠匿携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と隠匿携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべきである。
2. 職務上の必要から、軽犯罪法1条2項所定の器具に当たる護身用に製造された比較的小型の催涙スプレーを入手した者が、これを健康上の理由で行う深夜路上でのサイクリングに際し、専ら防御用としてズボンのポケット内に入れて携帯したなどの本件事実関係のもとでは、同隠匿携帯は、同号にいう「正当な理由」によるものであったといえる。

4.評釈

軽犯罪法1条2項の「正当な理由」の具体的判断については、銃砲刀剣類所持等取締法22条の「業務その他正当な理由による場合を除いては」と同様に解される。「業務」とは「人が職業その他の社会生活上の地位に基づき、継続的に行う事務または事業」であり、「その他正当な理由」とは、社会通念上、刃物を携帯することが当然に認められるような場合である(例えば、包丁を購入して持ち帰る場合や登山者が登山用ナイフを携帯する場合)。他方、喧嘩の際の護身用としてナイフを携帯するような場合はこれらに当たらない。とすれば、一般的に催涙スプレーの隠匿携帯に関しては、「正当な理由」にはあたらないといえる。ただこの判決において無罪判決が出たのは、あくまで事実に即した判断であって、催涙スプレーの隠匿携帯が一般的に同条に触れないものではないことに注意すべきである。

5.私見

治安悪化のため、催涙スプレーのような防犯グッズを購入する人が増加しており、一概にこれらの器具の隠匿携帯を違法とするのはやはり妥当ではなく、最高裁が無罪判決を出した点について評価できる。このように考えれば、非力な女性が深夜に暴漢対策として催涙スプレー等を携帯していた場合は、「正当な理由」に当たると思われる。
今後このような事件が増えることが予想されるが、リーディングケースとして「正当な理由」の判断方法を示した
この判決を支持しうるものである。

6.参考文献

・伊藤榮樹『軽犯罪法(三訂版)』[1982]65 頁以下

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